この問題を背景にした映画が、この1月に公開されますが、007の映画の最新
『慰めの報酬』では、「ボリビアの水戦争」が背景に描かれているとのことです。
「ボリビアの水戦争」とは、1999年にボリビアが、水の民営化したことに端を発します。
ボリビアでは電気、航空、炭化水素、鉱業、森林資源、電気通信など、ほとんどの
公営企業や公営サービスが民営化されました。世界銀行とIMFの指示により、民営化を
すれば600万ドルの多国籍債務を帳消しにするという条件付きでした。
新しい水道会社は米国最大の建設企業ベクテル社の子会社でしたが、すぐに水道料金
を200%以上も値上げしました。最低月額給与が100ドルに満たない町で、水道の請求書は
月額20ドルに達したのです。20ドルは5人家族が2週間食べる食費に相当する金額。
当然、支払えない人たちが大勢出てきましたが、その支払不能者には容赦なく
供給を停止しました。
人間は水がなければ生きていけません。
高い水道水を飲めないので、不衛生な水を飲み、病気になる者も現れました。
ことの深刻さに、2000年1月「水と生活を防衛する市民連合」が結成され、
大衆動員によって市は4日間閉鎖。1ヵ月たたないうちに何百万というボリビア人が
コチャバンバに行進。ゼネストが始まり、交通機関がすべて停止。集会で、
国民すべての水の権利を守る要求である「コチャバンバ宣言」が出されました。
2000年4月、IMF、世界銀行、米州開発銀行に援助停止の圧力をかけられた政府は、
戒厳令を布いて抗議の鎮静化を図り、活動家が逮捕。
抗議する者は殺され、メディアに報道管制が行われました。4月と9月の騒乱により
死者9名、重度の負傷者約100名、また数十名が逮捕されました。
しかし、この弾圧も長くは続かず、結局、市民が勝ちました。新水道会社と
ベクテル社はボリビアを出て行き、政府は水道民営化法を撤回。
世界銀行やIMF(国際通貨基金)などの国際金融機関は、財政危機に陥った
国家に対し、融資を行います。その際の条件は、緊縮財政と輸出部門の拡大、
外国資本の投資促進などですが、これがいわゆる「構造調整プログラム」
と呼ばれているものです。
水にかかわりのない企業というのは考えられないのではないでしょうか。
工業用水として使う場合もありますし、ボトルウォーターを販売する、
輸入する食品企業もあるでしょう。
どんな場合でも、企業は工場進出した国(日本国内の工場も含め)の環境や
水資源に配慮しなくてはならないことはわかっていただけるでしょうし、
現に実行されていると思います。
でも通常はそれを担当されるのは、環境部署ではないでしょうか。
場合によっては、工業用水の確保に途上国の政府担当者との関わりで
腐敗防止部署(というのがあるかわかっておりませんが)も関係するかもしれません。
ですが、水の民営化が社会問題化しているボリビアに工場進出した企業は
あったとしたら、そこでの工業用水の問題は、その企業のCSRの人権イシュー
ではないと言い切れないのではないか。
飲み水が高騰し水が飲めず人権侵害されている人がいる国で、企業展開しようと
したら、いやおうなくこの問題に関わることになります。
ボリビアで水の民営化を行おうとしたベクトル社のCSRも問われますが、
工場進出した企業もまた「加担した企業」として糾弾されてしまうかもしれません。
ではどうしたらいいでしょうか、ということです。